NASAは、1978年から中心星の放射照度を測定しています。コロラド大学ボルダー校の科学者たちは、現在40年以上に及ぶこの一連の測定を確実に継続したいと考えています。そのため、大気宇宙物理学研究所(LASP)は非常に活発な活動を行っています。ここでは、NASAのTSISミッションにおける次なるステージに向けて、2つの装置が建設中です。TSISとはTotal and Spectral Solar Irradiance Sensorの略です。現在準備中のTSIS-2ミッションは2023年の打ち上げを予定しており、2017年から活動しているTSIS-1を受け継ぐ形となります。

TSISの観測装置は、TIMおよびSIMと呼ばれ、測定精度の大幅に向上しています。TIM(Total Irradiance Monitor)は、地球の主要なエネルギー源である全放射照度を記録します。一方で、SIM(Spectral Irradiance Monitor)は、分光放射照度を記録し、太陽エネルギー出力の変化に対する地球大気の反応について結論を導き出すことを目的としています。

TIMおよびSIMは、TSIS-1の時とは異なり、国際宇宙ステーションの船体の外側に座っているわけではありません。むしろ、地球の軌道上にある洗濯機ほどの大きさの衛星に乗って、独立して宇宙を旅しているのです。このミッションペイロードを担当するLASPのプロジェクトマネージャーであるDavid Gathright氏は、「自由飛行のミッションによって、より多くのデータを収集することができるのです」とこれを大きな利点と考えています。

ミッションの目的は、気候やエネルギーに関するより良いデータを得ること

天文学者は何世紀にもわたって、黒点や太陽フレアの数が周期的に変動することを観測してきました。この周期は平均して11年強であると言われています。黒点も太陽フレアも、太陽の表面温度が部分的に変化し、放射量が減少したり増加したりすることを示しています。つまり、太陽から放出される放射線の量は一定ではなく、変動しているのです。

この変動は、地球の気候などに影響を与えるため、今回のミッションにおける結果は特に、社会的に重要な意味を持っています。気候変動に取り組む科学者たちは、次世代の気候モデルを構築するために、「太陽から放出される放射線量に関するより正確な情報を必要としている。」とLASPチームリーダーのErik Richard氏は報告しています。また、この測定値は太陽光発電システムの効率を計算する際にも一役買っています。

超高精度への挑戦

大気宇宙物理学研究所は観測機器のコマンド操作と制御も担当しています。衛星が軌道に乗ると同時に、測定を成功させるためには最高の精度が必要で、その高い基準は、当然ながら最小のネジなどの細かい素材にまで及びます。その中には、VAT社がコロラド大学ボルダー校と共同で開発したバルブも含まれています。具体的には、01.2シリーズのミニ真空バルブで、実績のある確固なVATLOCKシーリング技術を採用しています。「ミニ」という呼称は偶然ではなく、呼び径がDN16とVAT製バルブの中では小型の部類に入ります。ミッションに求められる高い清浄度を満たすために、バルブの全部品はVAT社独自の特殊な洗浄工程を経ています。粒子が残ったり、ガスが出たりすることは絶対にあってはならないことであり、他の衛星部品と同様に、組み立てはクリーンルーム内で行われます。

© Nasa

衛星は地球の大気圏外を周回しているため、機器は熱応力などの過酷な宇宙環境にさらされています。技術的な問題に対し、先見性を持って解決するためには、ボルダーにあるTSIS-2の機器の管理者は、すべての製品に関する正確な情報を持っていなければなりません。VAT社のプロジェクトマネージャーであるWolfgang Niessner博士は、「我々のバルブの場合、ネジ1つからバルブハウジングに至るまで、全部品が注意深くテストされ、文書化されていることを意味します」と強調しています。そのため、プロジェクトの準備段階から実施中の調整が非常に重要であるゆえ時間もかかり、同僚やサプライヤーとのプロフェッショナルな協力関係のおかげで、すべてがうまくいったとNiessner博士は賞賛しています。そして、ミッションに向けて準備されたバルブは、すでに宇宙への旅の最初の目的地であるコロラド大学の宇宙実験室に到着しています。